三河島水再生センターで花見。企画書(PDF:316KB)

330本の桜と国の重要文化財「喞筒場施設」を観る。

ここは日本で最初の近代下水処理施設、旧三河島汚水処分場。国の重要文化財の指定を受け、耐震補強を完了して一般公開を開始した。今後は長期に渡る改修工事を視野に入れ、文化財の良好な保存を検討するそう。この春の「桜と施設見学会」に先駆けて、現地でお話を伺った。

歴史: 江戸から明治へと都市化して人口が密集する東京を襲ったコレラ。東京市は技師米元晋一を中心に下水道事業に着手。賛否両論の誘致活動を経て、隅田川中流に位置する現地で処理施設の運転を開始。1922年(大正11)から1999年(平成11)まで77年間稼動して、台東区や文京区等の下水処理を担った。一度は・朽化で閉鎖されたが、歴史的価値が認められて都が保存を決定、2007年には下水道施設として初めて国の重要文化財に指定された。

価値: 阻水扉室・濾格機室・沈砂池・量水器室・ポンプ室等、一連の工程を担う構造物群が旧態を保持しており、構成を知る資料として評価が高い。ポンプ室の外観は、左右対称の両翼と垂直と水平の単純で規則的な構成美を呈する「セセッション様式」。構造は関東大震災以前の鉄鋼・鉄筋コンクリート造の希少な大空間であり、屋根を支えるのは露出した変形キングポストトラス。屋内には10基のポンプ(荏原製作所製)と、建設当初の揚重機が残されている。

撮影リポート: 内部に足を踏み入れたとき、耐震補強のグリッド状の架構が重苦しく視界を阻み、10基並んで壮観であろうはずのポンプを隠しているのが残念に思えた。しかし、それはそれ、文化財保存の形と受け止めた上で撮影してみると、連続する屋根のトラスや計器類、細部のディテール、光が射すところに映える朽ちた色合いなど、数少ないフォトジェニック建築だと確信して圧倒される。保存改修を加えてつまらなくなった建造物にいくつか遭遇したが、ここにはまだ昔の痕跡が残っている。ご対応下った三河島水再生センターの瀬賀さんは、いつかは耐震補強を別の方法に置き換えて、建物本来の姿を見て欲しいと話す。建物両翼には非公開の小室がいくつかあり、公開される日がくることを切に望む。

公開条件等: 春には桜とつつじの開花に合わせ、秋には文化財ウィークに一般公開あり。商業撮影不可。地下構造物非公開。

[参考/東京都下水道局パンフレット・三河島水再生センターHP] 2010.03.05-17現地取材 (企画者/新藤)

対象写真






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