靖国通り、駅2分、俎橋は高架下、抜出てみればすぐそこに廃墟美を呈す古ビルの塊。ここが九段下ビル。
部屋は3階、全部で3室、短い廊下で一つに束ねられた格好だ。築80年、自然の風化、ささくれ、色褪せた工業カラーの重いドアを開けたその先は、ドアのないぽっかり穴の開いた壁から、2階の屋根がテラスのように伸びていた。次の部屋は黒電話が置かれた工業用作業台、壁にはメモ、摺りガラスの窓には、目の幅のスリット、探偵事務所か「日交社」。最後の部屋は不正形な床と高い天井を持つ、縦長窓の部屋、転がった黒電話。それぞれこのままで十分魅力的だ。何もしなくていいと思った。
今回は、内装をスケルトンに近い状態までマイナスデザインし、短期的な貸室としての整備を想定する。借り手、オーナー共に負担になることは一切しない。その代わり街中への拡張機能の調査、情報提供をお約束しよう。