「探偵事務所みたいな部屋、ずっと探してます。」と何度も言っている人に。

ここは銀座8丁目。終戦直後、築60余年の8階建雑居ビル。所有者移転のため竣工当時の詳細不明。なぜ「11」という名前なのか誰も知らない。現所有者の考えでは、今後の長期賃貸の募集をしない予定。現在入居中のテナントは古くからこのビルに事務所を構えている会社だという。この昭和雑居ビルの空室部分を09年末までの限定企画で、撮影や展示にお借りすることで交渉した。

内見時には、「何か」との遭遇を期待するような気持ちでとてもわくわくした。古く黒ずんだ階段がいい味を醸している。私が扱う物件の中では珍しく使えるトイレがちゃんとあり、水道、電気が使用可能。エレベータは後の時代に設置したもの。傍目にはその部屋が入居中なのか、空室なのか区別がつかず、鍵の所在がわからないと言われると、それはそれで面白がった。地下に行きたいがシャッターの鍵がなくて行けず、屋上に出たいが出られないと言われる、そのもどかしい感じが興味を掻立てた。

さて、探偵部屋のような部屋といえば、全空室に要素あり。窓を開けても隣のビルの壁が反射しているだけでちっとも明るくない。誰にも視界を邪魔されない。かと思うと無駄に燦々と陽が差す3坪の部屋。銀座の賃料の高さからか、何代もの入居者を経てどんどん小部屋に間仕切られた印象。大きさは3坪から6坪の間が充実。窓のど真ん中が間仕切壁で分断されたかと思うと、狭すぎたか後から2室連結した様子の部屋もある。窓の一部開閉不可、遮音には問題あり。投げやりとおおらかさが混在する今になって、アーティストにはむしろ使いやすい場所になったのではないかと思っている。セットバックした7階部分は明るく、外廊下がベランダのように開放的に使える。

現状より良くなる条件で、塗装など多少の改修可。新橋駅数分の距離、銀座中央通りすぐ。短期的構想のある方はぜひお問合せください。(企画者)

現地取材 2009.08.29

対象写真




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